美術解剖学図(書)は飽和状態に思えるほど出版されていますが、知識として学び暗記したい、描く際にカタログ的な資料として使いたいなど、人によって用途が微妙に違うはず。
特に後者の場合、あるポーズを描きたいのに真正面からの図や骨の構造を出されても、立体図がイメージ出来ていないと直接の資料としては使えませんよね。
この記事では、実際描いている時に具体的な資料として参照しやすい、知識や解説以上に即使用できるビジュアル資料としての価値が高いと思えた本を紹介します。
まだ美術解剖図の本は何も持っていない、沢山あり過ぎて迷っているという方は是非参考にしてください。(2021.10 投稿/ 2022.07 一部修正・追記)
スカルプターのための美術解剖学
長らく美術系の解剖図の本といえば「やさしい美術解剖図」という評判だったのが、ついに取って変わられたという印象の本。
人体のバランス、骨や筋肉の構造、色んなポーズの写真やそれに重ねた解剖図など、写真と図満載で全身に渡って広くカバーされています。人間の絵を描き続ける気なら一冊目に買って損はないはず。
ただ情報のまとめ方がカタログ的なため、構造を一から順を追ってしっかり学んで暗記したいという場合には、少し不向きかもしれません。
モルフォ人体デッサン
こちらはポーズ・動作に特化した本。骨格や筋肉組織、解剖ディテール、動作の様子などが、 綺麗なデッサン画で細かく解説されています。
全て白黒の絵・線画であるため、凹凸具合がイメージしにくいところもありますが、様々な角度からの具体的なポーズが満載なので、イラストの資料としてかなり有用です。開いたままにしておける新装コデックス版がおすすめ。
名画・名彫刻の美術解剖学
広範囲・部分の基本的なポーズにつき、それぞれ体表の、解剖図・等高線を示した図・色分けされた解剖図が掲載されています。
基本図は男性のみで、骨や筋肉の内部構造は掲載されておらず、タイトルにある通り名画と名彫刻を元に解説するコーナーも多く割かれています。このため、構造をしっかり学びたい人が一冊だけ手にする本としてはおすすめできません。
しかし逆に体表に絞ってまとめられているので、実際に人間を描いている際の手っ取り早い筋肉の資料としては有用です。スカプルター~は部分ごとに解説が分かれており、体表の図だけサッと参照するには煩雑なので、個人的には助かっています。整った線で立体感がしっかり感じられる図なのも良いところ。必須ではないけど補助として役立つことも多いかなという本です。
アーティストのための人体解剖学ビジュアルリファレンス
こちらは10月中旬現在まだ発売されていないのですが結局買いそびれているのでここで紹介するのも少し気が引けるのですが、翻訳元となる海外版の公式サイトの紹介動画(中身をほぼ丸々見せてくれてます!)を見たところ、結構使えそうな雰囲気でした。
全身や部分的な写真1枚に対し、そこに解剖図を半透明で重ねた図・線画として描き起こした図・3D化した図を1セットにしたものが大量に掲載されています。
動画は「Anatomy for Artists – 3dtotal shop」の表紙下の「Take a look inside」からどうぞ。
構造をしっかり学びたい場合は…
人間を描くからといって、骨の形や筋肉の重なり方などの知識が全てのアーティストに必要だとは思いません。仮に頭の中で理解していても立体らしく描き出せるかは別です。内部構造よりポーズによる表層の形を覚えるか、逐一画像資料を参照した方が効率が良くそれで充分な場合もあるでしょう。
ただし、ある程度リアルな肉体を描きたいと思う方は、初期段階でも一度骨と筋肉の構造を一通りざっと学んでおく方が、かえって効率が良いようにも思います。勿論いきなりしっかり覚えるのは困難ですし、捉われすぎると逆に非効率にもなり得ますが、ほとんど何も知らずにポーズ資料をただ見よう見まねで描き写すより、多少知識がある上で資料を参照した方が、絵の精度もそのポーズの構造に対する理解度も上がるはずです。
では一度学んでおこう!という方におすすめしたい勉強方法は、まず初めに、骨のどこにどう筋肉がついていくか(筋肉の付け根の位置や重なり方)を、順を追って見ていくこと。
「私は表面(皮膚下)の形さえ覚えられれば良い」と思う方もいるでしょうが、表面上の筋肉の入り組み方は複雑で、いきなり完成図の状態を暗記するのはかなり困難です。骨に対して1つずつの筋肉がどこに付き、どう重なっていくかを見ていけば、格段に覚えやすくなります。
この場合の教科書としては、「ソッカの美術解剖学ノート」がおすすめです。高額めな分、絵を描く上で為になる知識が満載です。昔から有名な「やさしい美術解剖図」も未だに選ばれていますし決して悪くは無いのですが、白黒で構造図は少し線が荒れており、立体感などが分かりづらい部分もあります。
また、今は自由に回転・解体しながら参照できる3Dの解剖モデルのアプリなどもあるので、構造を見る分には平面図よりそちらの方が分かりやすいかもしれません。
webブラウザ上で無料で見れるものなら「Zygote Body 3D Anatomy Online Visualizer | Human Anatomy 3D」というサイトがあります(英語/ポーズはとれません)。
以下も参照にどうぞ↓
- 3Dの人体模型をアプリ・ブラウザで楽しめる「BioDigital Human」 | TeraDas
- 解剖学の勉強に役立つウェブサイト・ウェブサービスまとめ | 看護師・ナースの求人転職情報-フローレンス (kangokyujin.org)